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01月07日(木)

Ian Watson, "Divine diseases", Nature 462, 1088 (2009)

2009 年最後(12/24, 31号)の Nature 誌 Futures は、プロの SF 作家によるちょっと凝った作品と言えようか。病気の関係の言葉など、難しい単語が多くて、前半は特に閉口した。

 基本的なアイディアは、キリスト教の神はご自分の姿に似た形に人間をおつくりになったので、人間と同様の病気に悩まされるはずだというようなことか。最初の方は宇宙の創成や人類の歴史と並行した形で神の病気について語る。後半はミサにおける聖体拝領での秘跡(パンとワインがキリストの肉と血になる)が何百年も多くの信者によって行われ続けてきたために、キリストの体はどんどん肥満化していき、もはや地球上には尊厳をもって再降臨することができなくなり、地球のまわりをまわる新しい月となったとされる。最後のメッセージ Too Much Mass! は、質量を持ち過ぎたという意味と、ミサが多過ぎるという意味をかけているものと思われる。

 つまり、年末を締めくくるにふさわしい、壮大なユーモアともいうべきストーリーであった。まあ、こういう話はイスラム教では許されないだろうなという印象はうけた。もっと教養が深ければさらに楽しめたのかもしれない。完全に理解できたかどうか自信がないが、星3つとしておこうか。
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12月31日(木)

父親たちの星条旗(Flags of Our Fathers, クリント・イーストウッド, 2006)

いまや名監督としての地位を確立しているイーストウッドの作品で、評判にもなっていたものなので、当然なのかもしれないが、実はセットで製作された「硫黄島の手紙」がいまひとつ心に残らなかったため、あまり期待しないで観てみたところ、びっくりするほど心に響いてきた。いろいろなことを感じたり考えさせられたりしたのだが、何が一番心に残ったのかというと、兵士達が帰国した後、祖国で国債を買わせるための宣伝キャンペーンにかり出され、たくさんの俗物に出会うのだが、それを声高に告発するというよりも、そうだろうな、実際にあの戦場にいないと、主人公達の気持ちは理解できないだろうな、と納得させるようなところがあったことか。たとえば、何の気もなしにインディアンを傷つけるような発言をする人がたくさんでてくるが、なるほど人の痛みにはなかなか想像が及ばないものだなと感じ入った。それからすごい物量作戦で迫るアメリカ軍をどうしても我々は日本軍側の目でみてしまい、絶望的な気分になるが、当のアメリカ軍側からみれば、それでもすごい恐怖だったのだろうなと感じた。また、当時の日本とはまったくレベルが違うものの、やはりアメリカも苦しい状況だったことがよくわかった。話は変わるが、いま「坂の上の雲」のドラマをテレビでやっているが、それで一番心に残るのは、軍部にひきずられて戦争に流れていく伊藤博文の苦悩である。日清戦争に勝ったから良かったようなものだが、負けていたら、太平洋戦争と同じような批判を浴びていたのだろうか。そもそもこのドラマは日新日露戦争を不可避のものととらえているのだろうか。もしあのとき、日本がこれらの戦争を起こさなかったら、今の日本はどうなっていたのだろうかと考え込んでしまう。この映画とあまり関係ないようだが、戦争を決断する人の立場までつい考えさせるような知的なところがこの映画にはあると思う。
 
12月27日(日)

Julian Tang, "Rejuvenation", Nature 462, 950 (2009)

2009年12月17日付け Nature 誌 Futures は、おなじみ Julian Tang によるもの。軽めのお話だが、前半の描写がいきいきしていたため、結構楽しめた。タイトルは「若返り」とか「再生」とかいう意味だそうだ(juvenile と語源は同じなのだろう)

 A級物理クラスでマーフィー先生が学生達を相手にホフマン渦について質問している。この質問の様子と、順番に答える学生の描写がうまく、読んでいて楽しい気分になった。ホフマン渦には若返り効果があることが微生物で証明されているが、それを人間レベルに応用するには、ジレリウムという元素を大量に合成する方法をみつけなければいけないことがわかる。そこにBenという学生が、ホフマン渦について、一般には知られていない新しい仮説を紹介する。授業はそこで終わりになり、先生はBenに少し残ってくれるよう頼む。実はBebは賞金稼ぎとして、Murphy(実は異星人でホフマン渦を使って時空を渡り歩いている)をずっと追ってきたのであった。Murphyは黒板の中に沈み込むように消え、Benもまたより優れた装置を使ってどこかの時空にジャンプするのであった。

 全体が映像的で、特にひねった結末や深いテーマがあるわけではないが、よく書けていると思う。星4つ。
 
12月19日(土)

Eric Brown, "In the recovery room", Nature 462, 818 (2009)

2009年12月10日付け Nature 誌 Futures は、たぶん久しぶりにプロのSF作家の作品であり、なかなかの味わいであったが、ストーリーに完全についていけたかどうかはちょっと自信がない。

 Intrepid という巨大宇宙船では多くの AI が働いているが、その中で故障のために十分に働けない AI 二体が哲学的な会話をかわす。いわく、我々はなぜここにいるのか、など。どうやら彼らは目的もなく宇宙空間で作業をしており、資源を使い果たしそうな勢いらしい。AI が自然に発生したという学説を議論するさまはユーモラスで笑える。終わり近くで、掘り出されてきた資源として、いわゆる生物が捕獲されていて、「科学の進歩」と叫んだりするようなのだが、この意味がよくわからなかった。AI の一台はこれが将来、船を乗っ取って、AI種を支配するだろうと恐れているのだが。

 シュールなイメージと奇妙な味わいがいい感じなので、星3つ(意味がもっと良く理解できれば4つかも)。
 
12月12日(土)

Nye Joell Hardy, "Press '1' to begin", Nature 462, 688 (2009)

2009年12月3日号のNature誌 Futures は、あんまり SF チックではないけど、楽しく読めた。オタク的というか、自閉症的になった若い男性主人公 Andrew が、社交的な会話を学ぶオンライン授業に申し込んだが、女性と思われる講師がオーディオインターフェースを通して話しかけても、恥ずかしがって、タイピングを通してしか応答してくれない様子をユーモラスに描いている。最後は、なぜ彼がこのクラスに申し込んだのかを講師がチェックすると、外出してデートしたいと思っているらしいことがわかり、主人公はますます恥ずかしがっている様子のところで終わる。作中で講師が Martin Pawley という人の作品の中から引用を行うが、今ひとつその面白さがわからなかった。実在の人物のようだが。
最近は長いこと個人的に楽しめる作品がなかったので、ちょっと甘めで星4つ。

追記:引用されていた本 The priate future は、1970 年代に未来の(このお話的)状況を予言しているということらしい。
 
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